大曲(おおがね) 1978年春 製作

  • 2012.02.08 Wednesday
  • 01:13
私が28歳の時、先代の明石治(初代代表)が依頼を受けたお仕事のご紹介です。

そもそも、大曲とは・・・?


大工さんが基礎の直角度や屋根勾配を計るゲージです。
基礎の墨出しをする際に使われる3:4:5の割合の木製の直角ゲージを、オオガネ・大矩・大曲と言います。

当時の大工さんは差し金を使って、3次元の空間の墨付けを自在に行っていましたが(規矩術)、屋根の勾配の場合にはどうしても実際に当てるゲージが必要になる為、何か良いゲージを作って欲しいとの依頼でお話を頂きました。


開発に当たっては、大きな課題が3つありました。

,覆襪戮コンパクトなもの
▲押璽犬箸靴討寮催戮確保出来るもの
4蔽韻膨廠兔个掘λ禄个靴出来るもの


これらの課題を解決させた形の提案が必要でした。


【課題 Г覆襪戮コンパクトなもの】

屋根に持って上がる為、本体を軽くそしてコンパクトにする必要がありました。
材質は、軽くする為にとアルミの押出し材(A6063)を使用し、持ち運びし易くする様に、折り畳み式でなお且つ伸縮する様に設計しました。

折り畳みにする為に2本の角パイプを蝶番で留め、任意の角度で留めれる様にステーを付けています。
また、蝶番は角度の要になるので精度を出す為に真鍮押出材から削り出して軸はステンレスで作りました。


ステーは長穴部を2箇所設け折り畳んでもステーが出っ張らない様にしました。
このステーの長穴に一部凹みを設けツマミを軽く締めただけで基準の位置にツマミとステーが留まる様に工夫し、このステーに付いたツマミが留まる位置と蝶番の軸位置が3:4:5の三角形分割にする事で、必ず直角の90度が出来る様に設計しています。




【課題◆Д押璽犬箸靴討寮催戮確保出来るもの】

アルミの押出し品は、アルミの円柱形インゴット(塊)を一定の温度に熱し大きな力で金型の中をトコロテンの要領で押出す事でアルミが成型されるものですが、一度に30〜50mに押出される途中や、6mの定尺にカットする時や、熱処理をする時に歪みや傷が発生します。
通常の使用には問題の無いものなのですが、さすがゲージとして使う場合はそうは行きません。

そこで、本来の長さより長く切ったアルミ角パイプで、まずは歪みと傷の検査をしました。
(最初は不良が多く何度も作り直しを繰り返しました。。。)


次に、そのパイプを伸縮させる際に中に入るアルミパイプと外のアルミパイプが、伸縮しても精度が変わらないようにするのに、非常に苦労しました。
伸縮の際にはアルミ同志が擦れてしまい、ある程度使ううちに黒くなり動かなくなるといった問題が発生しました。
そこで中に入るパイプの擦動面にテフロン塗装を施して摩擦を抑え、隙間に板バネと摩擦係数の少ない樹脂POM(ポリアセタール)の板を組み合わせて、中と外のパイプのギャップを無くしました。


【課題:簡単に直角出し・墨出しが出来るもの】

・基準位置の設定
ゲージが出来ても何を基準にして勾配を決めるかが出来ないので
写真にあるように水泡式の水準器を一方に2箇所、もう1方に1箇所設けました。



・ツマミのギャップ
ツマミはある程度スキマを持っても抜けない無い様にしないといけないのと、ステーの位置決め時にギャップ無く固定する必要があります。
そこで、ツマミの素材にPOM樹脂にナットを圧入して抜け止めビスで留めてから、アルミ板にスピン模様を施して
プレスで円形に抜いたモノをツマミの蓋として使用しました。
また、ツマミのデザインも、当時は真鍮にクロームメッキの丸形しかありませんでしたが、この波打ったデザイン(今となってはよく目にしますが)を採用する事で、全体が引き締まりました。





・角度合わせの簡易化
ベニヤ板等にゲージを置いて角度を出す時にゲージ一辺をベニヤの一辺と合わせるのに当りが必要になります。
その為に、本体に固定する為のチョボを設けました。
この時チョボの出し入れは指で簡単に出来る様に、かつ面から出さない様にする為に、チョボの側面を削り、抜け止めとしてベアリングをバネで押しながら止められる形状を考えました。
これでXYZ方向での角度合わせは、水準器と当りのチョボの2点での確認が出来るようになったので、非常に喜ばれました。




・墨だし基準
墨出しの基準は、基本的には角パイプのエッジで可能なのですが、より見やすくしたいとの要望が出たので、写真の様に角パイプの中央(中パイプは外パイプに準じてズレた位置にライン入れ)にアルミの押出成形時に溝を入れて赤インクで着色しています。




こうしてお客様の要請に合わせて形に成って行くのはとても大変な事ですが、
必要に迫られて色んな知識や技術が身に付いて行くのでとても勉強になりました。

大工さんが差し金を使って角度や曲線を出す規矩術の技の凄さに関心したり、
直角を出す方法に3:4:5に結び目を入れたロープででも出せる事を教えて貰ったり、
(それを使って、昔のピラミッドが正方形で出来ていたとか)

今までJIS1級の定規はどれも同じ所にメモリが在ると思っていたのが、
同じJIS1級の定規を並べて比較すると、少しづつズレがある事を知ったり、

水泡式水準器のガラスの位置決めは、実は石膏で固められている事を知ったり、

アルミレールの表面処理で発色が条件により変わって苦労した事や、
モノが擦りながら移動する擦動させる事の難しさ、今度それを固定させる難しさ、精度の許容範囲や
製品の美観基準範囲の決め方、などなど・・・。


それはそれは多くの事を学べました。


そして何より嬉しいのは、これらの苦難を解決し、
最終的に顧客から「良いものが出来た!ありがとう!」と喜んで頂き、
それが多く売れる事で、お客も工場も共に繁栄して行く事です。
コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック